本記事は弊社CBOスレッシュ・カーナがInc.comの寄稿記事として執筆した記事を転載し、本ブログで公開したものです。


紹介による採用はシリコンバレーにおける採用の不可欠な要素です。しかし、全ての採用を紹介ベースにしてしまうとだと企業の競争力強化につながる労働力の多様性を生み出せないこともあります。AdRollは最近、採用に無意識のバイアス(偏見)が生じてしまうことを再認識しました。

私は採用に対し、理由なく多様性を求めたり、語ったりしている訳ではありません。多様性のある採用基準を語るには、それなりの根拠や理由が必要だと思っています。これまでの経験から、人種だけでなく、様々な環境で育ってきた人や人生経験が違う人を採用することで、その人数分だけ考え方や問題解決法が生まれると私は思います。多種多様な視点や人生経験は、問題解決の迅速化、意思決定の向上、優れた製品の開発をもたらしてくれます。

多様性のあるチームでは、同じような考えばかりをやり取りするのではなく、お互いの抱えている思い込みが正しいかどうか、常に問われることになります。そして、そのことは数字にも表れています。人種に多様性がある会社は、財務成績が業界の中央値を上回る可能性が35%高いのです。

ですから、自分の(会社の)採用プロセスにバイアスがあり、最高の人材を獲得できていない可能性があると知った時は、当然ショックを受けました。

AdRollは、およそ2年前に無意識のバイアスを自覚して以来、全力でこの問題に取り組んできました。「多様性のある採用の実施」という目標を設定し、最近やっと変化が見られるようになってきており、リーダー職の女性の雇用率が67%上昇しし、不公平な扱いを受けているマイノリティ(underrepresented minorities)の雇用率は18%改善しました。また、エンジニアや製品管理といった技術職における女性の雇用率も36%向上しました。

この記事では、バイアスを撲滅し、多様性のある労働力を実現するためにAdRollが実施した方策と、他社が参考にできる教訓をいくつか紹介したいと思います。

1. データを元に「採用のリアル」を浮き彫りに

私たちの会社はテクノロジー企業ですので、「多様性のある採用」を実施していく上で、可能な限りデータを参考にして進めたいと考えました。たとえば、不公平な扱いを受けているマイノリティの採用率については、継続的に測定・追跡していないとわかりません。

成功には進捗のベンチマークが不可欠です。調査の作成、同規模のテクノロジー企業との比較、および従業員間の対話の促進には「Culture Amp」というソフトを使いました。またMcKinsey & Companyと提携し、職場の女性に関する調査を実施し、会社のリーダー職に女性が少ない理由を浮き彫りにしました。

こうした測定から、当社の多様性目標が実現可能であること、また、その責任がわれわれにあることがはっきりしてきました。

2. 社員全員で目標を共有

私たちは、採用チームに明確で追跡可能な目標を設定し、AdRollのコアバリュー(本質的価値観)のひとつである「透明性」を形にしました。議論を重ね、技術職とリーダー職で女性の採用を、また技術職でアフリカ系アメリカ人、アメリカ先住民、ラテン系アメリカ人といった不公平な扱いを受けている一般的にマイノリティと言われる人々のの採用にも力を入れることにしました。

多様性に対する草の根的な取り組みは以前からありましたが、オープンな形で明確な目標を設定することで、より多様で包括的な企業になるという志を、私自身やCEOをはじめ、全従業員が共有する基盤が得られました。多様性に対する取り組みを開始するにあたり、社内に目標を発表し、目標達成のための特別班を設置しました。

私たちは、多様性が意味するところは組織によって違ってくるとの考えから、AdRollにとっての多様性の中身をはっきりさせ、取り組みの進捗をどのように測定すべきかを明確にしようとしました。

3. 具体的なフィードバックを奨励

AdRollでは常に、全ての面接担当者が、Roller候補者(AdRollでは社員のことをRollerと呼んでいます)に対し、フィードバックをする仕組みをとっています。その中で一つよく聞くフレーズがあります。「彼/彼女は、AdRollの社風にとっても合っている」

しかし、それは実際にどういうことを意味しているのでしょうか。そこで、私たちはそれがどういう意味なのかを社員に聞き、明確化しました。「AdRollの社風にあっている」、それはすなわち、AdRollでは当たり前のことですが、「成長志向」、「積極的に学ぶ姿勢」、「前向きな態度」などを表現していることがわかりました。もちろん、「一緒に飲んだら楽しそう」などのプライベートでの価値観に関する評価も大切ですが、AdRollの社風や私たちの採用基準において、それは重要視すべきことの全てではありません。

その上で、面接担当者であるRollerたちには可能な限り詳細なフィードバックを求めました。曖昧なフィードバックを禁じ、可能な限り具体的なものにするよう促すことで、Rollerの「引き出す力」も養われました。面接担当者からはもう「社風にとても合っている」のようなフレーズはもう登場しないでしょう。

4. 自分たちのアイデンティティを見つける

「多様性のある採用」を実施するためには、まず「どのような会社になりたいのか」を問わなければいけません。この答えを見つけるには私たちがもともとベースとしたデータ以上のものが必要になります。

AdRollではすべてのオフィスで経営陣とRollerとか対話する場を設けており、従業員たちはAdRollで働くことについての考えを伝え合います。

それは簡単なことではありません。勇敢に自分の考えを披露する人が現れるまでその場が気まずい雰囲気になることも何度もありました。それでも時が経つにつれて、全員が正直に自分の考えを発言できるようになってきました。

AdRollでは多様性に対する取り組みについて、従業員間の会話を促進し進展を把握するため、その話題に特化したオンライン上のチャットルームも開設しています。さらに、「多様性のある採用」の最先端を行く他のテクノロジー企業にも支援を求め、AdRollが手本にできるベストプラクティスや戦術を学んでいます。

多様性のある労働力の採用は、傍から見るよりも大変で、時間もかかります。現在はまだ、私たちが理想とする「採用」からは距離があります。私たちは自分たちのバイアス(偏見)を見つけ出し対処することで、それまでAdRollで働くことがなかったかもしれない人たちにも門戸を開きました。

私たちが理想とする「採用」方法が正しいとは言い切れませんが、そうすることで、少しずつでも今後の成功のための準備をしていきたいと思っています。